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【後編】口腔機能低下と舌苔の関係|正しいケア方法と予防習慣

こんにちは長崎県諫早市の歯医者 諫早駅前歯科です。

舌苔 口腔機能 おくちぽかん

前編では、舌苔の基本知識と口臭・誤嚥性肺炎との関係についてお伝えしました。後編では、なぜ舌苔が溜まりやすくなるのか、その根本的な原因である「口腔機能の低下」と「口腔乾燥」について、そして正しい舌ケアの方法を詳しく解説します。

口腔機能の低下・発達不全が舌苔を増やす

舌苔の蓄積は、実は口腔機能の状態を示す重要なサインです。口腔機能が低下したり、十分に発達していないと、舌に汚れが溜まりやすくなり、舌苔が厚く付着してしまいます。

舌の重要な役割

舌は、話す、食べる、飲み込むという重要な口腔機能を担っています。

1. 咀嚼(そしゃく)機能 食べ物を歯で噛み砕く際、舌が食べ物を歯の上に運び、位置を調整します。また、食べ物と唾液を混ぜ合わせて食塊(しょっかい)を作る役割もあります。

2. 味覚機能 舌の表面には味を感じる「味蕾(みらい)」という器官があります。味覚を通じて食事の楽しみを感じ、また危険な食べ物を察知することができます。

3. 嚥下(えんげ)機能 飲み込む際、舌は食べ物を咽頭(のど)へ送り込む重要な役割を果たします。舌の動きが適切でないと、食べ物が口の中に残ったり、誤嚥のリスクが高まります。

4. 発音・構音機能 話すときに舌は複雑な動きをして、様々な音を作り出します。

5. 自浄作用 舌が正常に動くことで、舌の表面に付着した汚れが自然に取れやすくなります。

口腔機能低下で舌苔が増えるメカニズム

舌の動きが悪くなると自浄作用が低下する

口腔機能が低下すると、舌の動きが鈍くなります。健康な状態では、食事や会話の際に舌が活発に動き、舌の表面に付着した汚れが自然に取れます。しかし、舌の動きが悪くなると、この自浄作用が働かず、舌苔が蓄積しやすくなるのです。

よく噛まないことで舌が動かない

口腔機能が低下している方は、食事の際に十分に噛まずに飲み込んでしまう傾向があります。噛む回数が少ないと、舌の動きも少なくなり、舌苔が溜まりやすくなります。

唾液分泌の減少

口腔機能の低下は、唾液分泌の減少とも関連しています。よく噛むことで唾液の分泌が促進されますが、噛む力や回数が減ると、唾液も減少します。唾液には舌を洗い流す自浄作用があるため、唾液が減ると舌苔が増えてしまいます。

食べ物が口の中に残りやすい

舌の動きが悪いと、食べ物が口の中、特に舌の上に残りやすくなります。これが細菌の栄養源となり、舌苔の増加につながります。

子どもの口腔機能発達不全と舌苔

近年、子どもの口腔機能発達不全が問題視されています。柔らかい食べ物ばかりを食べる、よく噛まない、口呼吸などの習慣により、舌を含む口腔機能が十分に発達しないケースが増えています。

口腔機能発達不全のサイン:

  • 食べるのが遅い
  • 食べこぼしが多い
  • 口を開けて食べる
  • くちゃくちゃ音を立てて食べる
  • 丸飲みする
  • 偏食が多い
  • 口呼吸をしている
  • いびきをかく
  • 滑舌が悪い

これらの症状がある子どもは、舌の動きが十分でなく、舌苔が溜まりやすい傾向があります。小さい頃から適切な口腔機能を育てることが、将来の健康にもつながります。

オーラルフレイルと舌苔の関係

オーラルフレイルとは、加齢に伴う口腔機能の衰えのことです。舌の筋力低下や動きの鈍化は、オーラルフレイルの重要なサインの一つです。

オーラルフレイルは以下のような段階で進行します:

  1. 滑舌の低下、食べこぼし
  2. 噛めない食品の増加
  3. 嚥下機能の低下
  4. 低栄養、サルコペニア(筋力低下)
  5. 要介護状態

口腔機能が低下すると:

  • 舌の動きが鈍くなる
  • 噛む回数が減る
  • 唾液の分泌が減少する
  • 舌の自浄作用が低下する
  • 結果として舌苔が厚く蓄積する

つまり、舌苔が厚く付着している状態は、口腔機能の低下を示すサインとも言えるのです。

30代のうちから口腔機能を意識したケアを始めることで、将来のオーラルフレイルを予防し、健康寿命を延ばすことができます。

舌苔と口腔乾燥(ドライマウス)の悪循環

口腔乾燥は舌苔を増やす大きな原因であり、また舌苔が口腔乾燥を悪化させるという悪循環を生み出します。

唾液の重要な働き

唾液には以下のような重要な機能があります:

1. 自浄作用 お口の中の食べかすや細菌を洗い流します。特に舌の表面についた汚れを洗い流す役割は重要です。

2. 抗菌作用 唾液に含まれる抗菌物質(リゾチーム、ラクトフェリンなど)が細菌の増殖を抑えます。

3. 粘膜保護作用 口腔粘膜を保護し、傷つきにくくします。

4. 消化作用 唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)がデンプンの消化を助けます。

5. 緩衝作用 お口の中のpHを中性に保ち、むし歯を予防します。

口腔乾燥が起こる原因

  • 加齢:唾液腺の機能低下
  • ストレス:自律神経の乱れ
  • 薬の副作用:抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬など
  • 口呼吸:鼻づまりや習慣による
  • 口腔機能の低下:よく噛まないことで唾液分泌が減少
  • 全身疾患:シェーグレン症候群、糖尿病など
  • 脱水:水分摂取不足
  • 喫煙・飲酒
  • 更年期障害:ホルモンバランスの変化

仕事のストレス、忙しさによる水分摂取不足、また一部の方は更年期の初期症状として口腔乾燥を感じることもあります。

口腔乾燥と舌苔の悪循環

唾液が減少すると、舌の自浄作用が低下し、舌苔が厚く蓄積します。舌苔が増えると、お口の中の細菌バランスが崩れ、さらに口腔環境が悪化します。

また、口腔機能が低下してよく噛まなくなると、唾液の分泌がさらに減少し、口腔乾燥が進みます。

この状態が続くと:

  • 口臭が強くなる
  • むし歯や歯周病のリスクが高まる
  • 味覚が鈍くなる
  • お口の中が痛い、ヒリヒリする
  • 食事がしづらい
  • 会話がしにくい
  • さらに口腔機能が低下する

といった様々な問題が生じます。

正しい舌苔のケア方法

舌苔のケアは、口臭予防、誤嚥性肺炎予防に欠かせません。しかし、間違った方法で行うと舌を傷つけてしまうこともあるため、正しい方法を知ることが大切です。

舌ケアの基本

1. 専用の舌ブラシを使用する 歯ブラシではなく、舌専用のブラシやクリーナーを使いましょう。舌ブラシは柔らかい素材で、舌を傷つけにくい設計になっています。

2. 舌の奥から手前に向かって優しく 舌の奥(舌根部)から舌先に向かって、一方向に優しく動かします。決して往復させないようにしましょう。

3. 力を入れすぎない 舌は繊細な組織です。強くこすると傷つき、かえって細菌が繁殖しやすくなります。

4. 1日1回、朝の歯磨き後に 舌ケアは1日1回で十分です。やりすぎは逆効果。朝の歯磨き後に行うのが効果的です。

5. 嘔吐反射が強い方は無理をしない 舌の奥をケアすると「オエッ」となる方は、無理に奥まで行わず、できる範囲でケアしましょう。

舌ケアの手順

  1. 鏡を見ながら舌を前に出す
  2. 舌ブラシを舌の奥に軽く当てる
  3. 奥から手前に向かって優しく引く(3〜5回程度)
  4. 舌ブラシを水で洗い流す
  5. 口をすすぐ

やってはいけない舌ケア

  • 歯ブラシでゴシゴシこする
  • 何度も繰り返し磨く
  • 舌を往復させてこする
  • 舌磨き専用ではない硬いもので擦る
  • 食後すぐに行う(舌が傷つきやすい)

まとめ:舌のケアと口腔機能の維持で健康な毎日を

舌苔は、口臭の原因となるだけでなく、誤嚥性肺炎のリスクを高める可能性があります。そして、舌苔が厚く付着しているということは、口腔機能の低下や口腔乾燥のサインかもしれません。

口腔機能が低下すると、舌の動きが鈍くなり、自浄作用が働かず、舌苔が溜まりやすくなります。つまり、舌苔の根本的な改善には、舌のケアだけでなく、口腔機能を維持・向上させることが重要なのです。

次回の記事では、口腔機能を維持・向上させる具体的な方法と、舌苔を減らす生活習慣について詳しくご紹介します。

当院では、舌苔の状態チェックや正しい舌ケアの指導、口腔機能の評価を行っています。舌のことや口腔機能について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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