こんにちは長崎県諫早市の歯医者 諫早駅前歯科です。
前回は、誰しもが経験する可能性のある生理的口臭について解説しました。今回は、病的な原因が考えられる口臭「病的口臭」と、心理的な要因が大きな部分を占める「心理的口臭」について詳しく解説していきます。
病的口臭とは？
病的口臭とは、何らかの病気や口腔内の異常が原因となって起こる口臭のことです。単なる不快な口のニオイだけではなく、何らかの健康上の問題が隠れている可能性があります。
病的口臭の原因としての歯周病
口臭の原因の一つとして、歯周病が挙げられます。歯周病は、歯を支えている歯周組織が細菌によって破壊される病気です。この歯周病が、口臭を発生させるメカニズムと、その治療法であるスケーリング、ルートプレーニング、フラップ手術、そしてSPT（サポーティブペリオドンタルセラピー）について詳しく解説します。
歯周病が口臭を引き起こすメカニズム
歯周病になると、歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる隙間ができてしまいます。この歯周ポケットの中に、歯垢（プラーク）や歯石が溜まり、悪臭を発生させる原因となる細菌が繁殖します。これらの細菌が作り出す「揮発性硫黄化合物」と呼ばれる物質が、口臭の原因となります。
揮発性硫黄化合物には、メチルメルカプタンや硫化水素などがあり、これらは腐った卵のような悪臭を放ちます。歯周ポケットが深くなればなるほど、細菌が繁殖しやすく、口臭は悪化します。
歯周病の治療法
歯周病による口臭を改善するためには、歯周病そのものを治療することが大切です。主な治療法として、以下のものが挙げられます。
スケーリング（SC）
スケーリング（Scaling）は、歯の表面に付着した歯石を除去する治療法です。歯周病の治療だけでなく、口臭予防にも非常に効果的です。
なぜスケーリングが口臭予防に効果的なのか？
歯石は、歯垢が石灰化したもので、細菌の温床となります。スケーリングで歯石を除去することで、細菌の繁殖を抑え、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物の発生を抑制します。スケーリングを行うことで歯ブラシではなかなか届かない歯周ポケット内の汚れを除去し、口腔内の清潔を保ちます。スケーリングは1度行えばOKというわけではありません。口腔内の汚れは毎日増え続けます特に歯ブラシの届きにくい歯周ポケットの中では再び歯石ができてしまうことも珍しくありません。スケーリングは定期的に行うことが重要となります。
スケーリングを受けるメリット
歯石を除去することで、口臭の原因となる細菌の繁殖を抑え、口臭を改善することができます。歯を失う原因のほとんどを占める歯周病を予防することにもつながります。また、歯の着色など見た目で困っている方の中には歯石が原因である人も多く見られます。スケーリングを行うことで歯の表面がツルツルになるため、歯の美観が向上します。
スケーリングの頻度
スケーリングの頻度は、個人差や歯周病の状態によって異なりますが、一般的には3ヶ月に一度が目安です。
スケーリングルートプレーニング（SRP）
SRP（スケーリングルートプレーニング）は、歯周病治療において非常に重要な処置です。歯周病は、口臭の原因となる主な要因の一つであるため、SRPを行うことで、効果的に口臭を予防・改善することができます。
なぜSRPが口臭予防に効果的なのか？
歯周病で起こる口臭の主な原因は歯周ポケット内に存在する歯石です。この歯周ポケット内の歯石を取り除く第１段の治療法がSRPと呼ばれる治療法です。SRPは歯周ポケット内の歯石だけでなく細菌によって作られた不良肉芽や歯周ポケット奥深くのプラークも除去します。
汚染物を除去することによって歯茎の腫れが引き歯周ポケットは小さくなります。歯周ポケットが小さくなると汚染物が存在できるスペースが少なくなります。また歯ブラシなどによるケアも行いやすくなるため口臭予防にとても効果的な処置であると言えます。
フラップ手術（歯周外科）
フラップ手術（歯周外科）は、歯周病が重度な場合に行われる外科的な治療法です。歯肉を切開し、歯周ポケットを直接開き、歯根の表面を徹底的に清掃します。この治療法が、口臭予防に非常に効果的な理由を解説します。
なぜフラップ手術が口臭予防に効果的なのか？
フラップ手術はスケーリングやSRPとは異なり歯茎を切開し歯についた汚れ、歯の根っこがしっかりと見える状態で行う処置です。従って汚れの除去は行いやすく徹底的に清掃することができます。歯槽骨の吸収が大きく（歯の周りの骨が多く溶けている人）に効果的な処置です。通常のスケーリングでは届きにくい深部の歯石や炎症を起こした組織を除去できます。これにより、細菌の温床を取り除き、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物の発生を抑制します。
フラップ手術で徹底的に清掃することで歯茎の再生を促します。健康となった歯茎は細菌の侵入を防ぎ口臭を予防します。フラップ手術で一度開かれた歯茎は腫れがなくなり歯周ポケットの形状を改善し、歯ブラシが届きやすい状態にすることができます。これにより、患者さんご自身のセルフケアがしやすくなり、再発予防に繋がります。
SPT（サポーティブペリオドンタルセラピー）
SPT（サポーティブペリオドンタルセラピー）は、歯周病治療後のメンテナンスを指し、歯周病の再発を防ぎ、口腔内の健康を維持するための治療法です。このSPTが、口臭予防にどのように役立つのか解説します。
なぜSPTが口臭予防に効果的なのか？
歯周病は再発しやすい病気です。SPTでは、定期的な検査により、歯周病が再発する兆候を早期に発見し、治療を開始することができます。これにより、歯周ポケットが深くなったり、歯周炎が進行したりするのを防ぎ、口臭の原因となる細菌の増殖を抑えます。また定期的に歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングを行うことで歯ブラシでは届きにくい歯周ポケット内の歯石やプラークを徹底的に除去します。これにより、口臭の原因となる細菌の温床を取り除き、口臭を予防します。
また、SPTでは、歯周病だけでなく、虫歯や口腔内のその他の問題も早期発見し、治療することで、口腔内の健康を総合的に維持します。健康な口腔内は、口臭の原因となる細菌の繁殖を抑え、口臭予防に繋がります。
心理的口臭とは？
心理的口臭とは、実際に口臭があるわけではないのに、自分が口臭を持っていると思い込んでしまう状態のことを指します。別名、自臭症とも呼ばれます。
心理的口臭の原因
心理的口臭ははっきりとした原因がないだけに様々な要因が考えられます。ここでは一般的によく言われる心理的口臭の原因についてご紹介いたします。
ストレス
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、唾液の分泌を抑制することがあります。唾液の分泌量が減ると、口の中が乾燥し、口臭を感じやすくなります。
完璧主義
完璧主義な性格の人は、些細なことで自分を責めがちで、口臭についても過度に気にしがちです。
過去の経験
過去に口臭で辛い経験をしたことがある人は、トラウマとなり、過度に口臭を恐れるようになることがあります。
口臭で悩む人へ
口臭は、誰しもが経験する可能性のある悩みのひとつです。食事後や起床時などの一時的な口臭だけでなく、持続的な口臭に悩まされている方も多いのではないでしょうか。今回は、口臭の原因から効果的な対策まで、詳しく解説してきました。
口臭の原因は様々で、生理的口臭、病的口臭、心理的口臭の3つに大きく分けられます。
生理的口臭
乾燥や食生活など、一時的な原因による口臭です。
病的口臭
歯周病や虫歯など、口腔内の病気による口臭です。
心理的口臭
実際に口臭がないのに、自分が口臭を持っていると思い込んでしまう状態です。
病的口臭の原因となる歯周病については、スケーリング、ルートプレーニング、フラップオペレーション、そしてSPTといった治療法によって改善が期待できます。これらの治療法は、歯周ポケット内の歯石やプラークを除去し、口腔内の清潔を保つことで、口臭の原因となる細菌の繁殖を抑えます。
口臭に悩んでいる方は、一人で悩まずに、歯科医院を受診しましょう。問題がはっきりし解決することで長年悩んでいたことが解決する糸口が見つかるかもしれません。
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