こんにちは長崎県諫早市の歯医者 諫早駅前歯科です。
鏡で舌を見たとき、表面に白っぽいものが付着していることに気づいたことはありませんか?それは「舌苔(ぜったい)」と呼ばれるもので、実はお口の健康だけでなく、全身の健康にも関わる重要なサインなのです。
今回は、舌苔の基本知識と、口臭や誤嚥性肺炎との関係について、歯科医の視点から詳しく解説します。
目次
舌苔(ぜったい)とは何か?
舌苔とは、舌の表面に付着する白色や淡黄色のコケ状の堆積物のことです。その正体は、細菌、食べかす、剥がれ落ちた口腔粘膜の細胞、白血球などが混ざり合った細菌の塊です。
健康な状態でも舌には薄く舌苔が付着していますが、体調不良や口腔ケア不足などによって舌苔が厚く蓄積すると、さまざまな問題を引き起こします。
舌の表面には「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という小さな突起がたくさんあり、この隙間に細菌や汚れが溜まりやすい構造になっています。特に舌の奥側(舌根部)は自浄作用が働きにくく、舌苔が厚く付着しやすい部分です。
舌苔が増える主な原因
- 口腔ケア不足
- 口腔乾燥(ドライマウス)
- 唾液分泌の減少
- 体調不良や免疫力の低下
- 口腔機能の低下や発達不全
- 口呼吸
- ストレス
- 薬の副作用
- 全身疾患(糖尿病、腎臓病など)
舌苔と口臭の深い関係
舌苔は口臭の最大の原因の一つ
口臭の原因の60%以上は舌苔によるものと言われています。舌苔に含まれる細菌が、食べかすやお口の中の剥がれ落ちた細胞に含まれるたんぱく質を分解する際に、揮発性硫黄化合物(VSC)という悪臭成分を産生します。
この揮発性硫黄化合物には主に3種類あります:
- 硫化水素:卵が腐ったような臭い
- メチルメルカプタン:玉ねぎが腐ったような臭い
- ジメチルサルファイド:生ゴミのような臭い
これらの成分が混ざり合うことで、不快な口臭となります。特に朝起きたときに口臭が強いのは、就寝中に唾液の分泌が減少し、舌苔の細菌が活発に活動するためです。
舌苔による口臭の特徴
- 朝起きたときに特に強い
- 空腹時や緊張時に強くなる
- 会話中に相手が顔をそむける
- 自分でも口の中の不快感がある
- マスクをしていると自分の口臭に気づく
30代女性の場合、仕事でのプレゼンテーションや人と接する機会が多く、口臭が気になって自信を持てないという悩みを抱える方も少なくありません。
口臭対策の第一歩は舌苔ケア
歯磨きをしっかりしているのに口臭が気になるという方は、舌苔が原因かもしれません。歯だけでなく、舌のケアも口臭予防には欠かせないのです。
舌苔と誤嚥性肺炎の危険な関係
近年、高齢化社会の進展とともに注目されているのが、舌苔と誤嚥性肺炎の関係です。
誤嚥性肺炎とは?
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液、胃の内容物などが誤って気管に入り込み(誤嚥)、その中に含まれる細菌が肺で炎症を起こす病気です。高齢者の肺炎の約70%は誤嚥性肺炎と言われており、日本人の死因の上位に位置しています。
舌苔が誤嚥性肺炎のリスクを高める理由
舌苔には大量の細菌が含まれています。その数は、舌苔1gあたり約1兆個とも言われており、歯垢(プラーク)と同等かそれ以上の細菌数です。
この細菌を含んだ唾液や食べ物が誤って気管に入ると、肺で炎症を引き起こし、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。
特に以下のような方は注意が必要です:
- 高齢の方
- 嚥下機能(飲み込む力)が低下している方
- 脳卒中などで嚥下障害がある方
- 寝たきりの方
- 認知症の方
- 口腔ケアが十分にできていない方
予防のポイント
誤嚥性肺炎を予防するには、お口の中の細菌数を減らすことが重要です。舌苔のケアは、歯磨きと同じくらい大切な誤嚥性肺炎予防策なのです。
ご高齢のご家族がいらっしゃる方は、舌のケアも含めた口腔ケアを習慣化することで、誤嚥性肺炎のリスクを大幅に減らすことができます。
30代から始める予防習慣
「誤嚥性肺炎なんて、まだ自分には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、今から正しい舌ケアの習慣をつけておくことは、将来の健康につながります。また、ご両親など高齢のご家族のケアにも役立つ知識です。
まとめ
舌苔は、口臭の主な原因であり、放置すると誤嚥性肺炎などの重篤な病気のリスクを高める可能性があります。しかし、適切なケアによってこれらのリスクを減らすことができます。
次回の記事では、舌苔が溜まりやすくなる「口腔機能の低下」と「口腔乾燥」について、そして正しい舌ケアの方法を詳しくご紹介します。
当院では、舌苔の状態チェックや正しいケア方法の指導を行っています。口臭や舌の状態が気になる方は、お気軽にご相談ください。
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